現場リーダーのための調整力養成講座 (日経システムズ 連載記事)

●第1回 現場リーダーが抱えるジレンマ (2014年4月号)
解決しないけど向き合う
ジレンマの許容度が重要

ジレンマが解消することはない
現場リーダーが抱える「七つのジレンマ」
  (1) 判断軸のジレンマ (経営層と現場ではなく目的の共有)
  (2) 目先と将来のジレンマ (成果と成長)
  (3) 権限と責任のジレンマ (権限より影響力)
  (4) 抵抗勢力のジレンマ (正否ではなく成否)
  (5) 根回しのジレンマ (効率より効果)
  (6) 曖昧と詳細のジレンマ (成果物、プロセスの共通認識へ)
  (7) 調和と衝突のジレンマ (衝突は必要なプロセス)
マネージャーの優秀さはジレンマへの許容度に表れる

まとめ
・現場リーダーは、相反する立場の人たちの間に立つ。
  組織のしがらみを乗りこなす立ち回りが必要。
・ジレンマとなる場面は多くある。
  現場リーダーとしての優秀さは、「ジレンマの許容度」にかかっている。
・ジレンマを解消しようとするのではなく、ジレンマでなくなるようなアプローチを採ろう。

●第2回 権限なしでも影響力を発揮する (2014年5月号)
言葉や態度を通貨として利用
「価値の交換」で人を動かす

人を動かせない現場リーダーに成功はない
影響力を発揮することは「価値の交換」
  影響力の発揮を阻む八つのアンチパターン
  (1) 相手を否定的に考える
  (2) 目標が曖昧
  (3) 相手の世界を理解していない
  (4) 相手が何に動くのかに気づかない
  (5) 相手が価値を置くものを認めない
  (6) 相手の求めに応じられる自分のリソースに気づいていない
  (7) 相手の人間関係の経緯に配慮しない、修復しない
  (8) 価値の交換の仕方を決めない、働きかけない
権限を持たずに人を動かす六つの法則
  法則1:味方になると考える
  法則2:目標を明確にする
  法則3:相手の世界を理解する
  法則4:カレンシーを見つける
  法則5:関係に配慮する
  法則6:目的を見失わない
普段からカレンシーを意識して蓄える
  ・ビジョン、目的
  ・メンバーの成長の助け
  ・プライベートな事情への理解
  ・感謝、承認

まとめ
・影響力を発揮することは「価値を交換」することである。
  権限を持っていなくても価値を交換することは可能だ。
・相手が何に価値を置くのかを理解し、「カレンシー」を普段から蓄える努力が必要。
・現場リーダーは言葉を惜しんではいけない。
  また、相手を操作しようとしてはいけない。

●第3回 「ありがとう」を引き出す交渉力 (2014年6月号)
人の心理にどう働きかけるか
勝ち負けを争った時点で失敗

交渉力の有無がプロジェクトの成功を左右する
「イエス」を引き出すための六つの原理
  ◎返報性の原理 (GiveしてTakeを引き出す)
  一貫性の原理
  社会的証明の原理
  好意の原理
  権威の原理
  希少性の原理
交渉相手に「譲る余地」を残す
「譲るものの価値」を正しく認識してもらう
相手に非があるときは「先に譲る」 (例:自分から"リスケが必要"と言ってあげる)
断らせて譲歩する「ドア・イン・ザ・フェイス」
プロジェクトの交渉現場に当てはめてみる
相手を操作しようとするのは禁物

まとめ
・「交渉力の」の有無がプロジェクトを成功に導けるかどうかを分ける。
・交渉のゴールは「ありがとう」を引き出すことであり、相手を打ち負かすことではない。
  そもそも勝ち負けがあってはならない。
・返報性の原理をうまく利用する。
  相手に非があるときは先に譲るとよい。

●第4回 チームの成長とリーダーシップ (2014年7月号)
「ふつう」は基準にならない
立場の違いを理解して行動

経験豊富なリーダーもかつては同じように悩んだ
立場によって「ふつう」の基準が変わる
「ちがう」前提に立てば行動が変わる
チームは四つの段階を経て本当のチームになる
  タックマンのチーム形成4段階モデル
    (1) 成立期(様子見)
    (2) 動乱期(小競り合い)
    (3) 安定期(つながる)
    (4) 遂行期(まとまる)
状況に応じてスタイルを変える
  状況対応リーダーシップのモデル
    (1) S1=教示的 (目標を示す)
    (2) S2=説得的 (意思疎通を促進する。「成否」の判断をする)
    (3) S3=参加的 (権限を委譲する)
    (4) S4=委任的 (丸投げせずに委ねる)
チームの成長を妨げる七つのアンチパターン
  (1) 何か言わずにいられない
  (2) メンバーと競争する
  (3) 新しいやり方を嫌がる
  (4) 知識を軽んじる
  (5) 丸投げする
  (6) 発言が変わったことを認めない (変わった理由を説明する)
  (7) 他の部署や上に意見できない
メンバーをうまく動かす三つのコツ
  (1) 指示よりも質問をする
  (2) 問題解決の権限を与える
  (3) 期待する (例:"お前らしくないな")

まとめ
・立場によって「ふつう」の基準が異なることがある。
  リーダーはこれを認識し、自分と相手が「ちがう」前提に立ち行動すべき。
・チームは4段階の成長過程を経てまとまる。
  段階ごとに適切なリーダーシップスタイルが必要。
・メンバーを動かすには「接し方」が重要。
  頭を使わせる、権限を与えるなどの工夫をする。

●第5回 部下を動かし成長させる影響力 (2014年8月号)
部下の動機を見誤らない
裏の目的も話し合おう

リーダーと部下では同期の源泉が違う
部下との相互依存関係を理解する
  メンバーはリーダーに守られている。リーダーはメンバーに生かされている。
デスマーチはなぜつらいのか
  見通しが見えない
ロードマップに必要な「6+1」
  (1) 使命 (何に取り組むのか、何を生み出すのか)
  (2) 目的 (何のため、背景、何を達成)
  (3) 目標 (目的の達成基準)
  (4) 最終期日
  (5) マイルストーン
  (6) 完了基準
  (+1) 裏の目的 (メンバーの育成、等)
  ツール
    プロジェクトチャーター(プロジェクト憲章)
    プロジェクトライフサイクル設計フォーマット
報連相の基準を示す
  報連相自体が目的化しないようにする。
  ・事前報告が必要な問題はどのようなものか(予算、コスト、リソース配分など)
  ・どんなレベルであれば事後報告でよいか
  ・どんな変化があれば報告しなければいけないか
  ・現場優先で判断してよいのはどのようなケースか
  メンバーの判断を最大化する。(委ねる)
カンファレンス型でメンバーを育成 (例:医療のカンファレンス)
  (1) 情報はすべて開示する
  (2) メンバーを「専門家」として扱う
  (3) 双方向で話し合う
衝突を避けない

まとめ
・リーダーとメンバーではモチベーションの源泉が異なる。
・リーダーとメンバーは相互依存の関係であることを理解する。
・報連相はリーダーのためにするものではない。
・影響力を発揮するリーダーは衝突を避けない。

●最終回 「政治力」を生み出す振る舞い方 (2014年9月号)
組織に働く力学を知り
パワーと影響力を行使する

物事を実行する三つの方法
  (1) 階層による権限を使うこと
  (2) 共有されたビジョン、組織文化を育てる
  (3) パワーと影響力の行使
    パワー:行動に影響する潜在能力
    影響力:パワーを活用し、実現するプロセス
組織の力学を理解する
決裁権者とキーパーソンは違う
誰に言わせるかを考える
リスクの捉え方の違いを知る
経営者との接し方

まとめ
・政治から逃げては成果を生み出せない。
・パワーと影響力を行使して物事を進める実行プロセスが重要。
・組織の力学を理解し、キーパーソン、懐刀を押さえる。